☆ 不定形とは何か?
英語の文法でいう「to 不定詞」と「動詞の原形」にあたるものです。
「不定」とはどういう意味かというと、「直説法か接続法か仮定法か命令法か」、「過去時制か現在時制か未来時制か」 、「主語は単数か複数か、第一人称か第二人称か第三人称か」といった文の性格を決める諸条件によって「決められた形」(=定形)ではない(=不定形)という意味です。
「条件によって形が定まっていない形」=「不定形」 というわけです。不定形は一つの動詞に一つの形しかありませんから「不定=形が定まらない」と言われると逆のような気がしますが、この場合の「不定=形が定まらない」は条件で形が決められる前の形だと理解する必要があります。
金属が溶解しているイメージが当てはまるかも知れません。高熱で溶解している金属は決まった形を持っていませんが、金属そのものの本来の性質は備えています。これが冷やされて鋳型に入れられると、それぞれに異なる形になります。溶けて形が定まらない状態が「不定形」の状態です。
☆ 不定形は共通した形を持っている
英語の文法でいう「動詞の原形」は、「be動詞」以外は、現在時制の形と同じで、動詞によって様々な形をしています。
これと違ってスペイン語では、動詞の不定形は共通した形を持っており、時制や主語などに従って形態変化した形とはすぐに見分けがつきます。
☆ 不定形は -ar / -er / -ir のいずれかの形で終わる
スペイン語の不定形は -ar / -er / -ir のいずれかの形で終わります。時制や主語などに従って形態変化した動詞がこのような語尾を持つことはありません。
不定形の語尾の形によって全ての動詞は「-ar 動詞」「-er 動詞」「-ir 動詞」のいずれかに分類されます。一部の不規則動詞を除く大半の動詞の時制や主語などに従った形態変化はこの分類による変化のパターンを持っています。
☆ 不定形は文の主動詞以外の要素として使われる
文の主動詞となっている動詞は、時制や主語などの条件に従って決まる形をとらなければなりません。この主動詞以外の要素として動詞が文に現れる時は不定形が用いられることになります。
例えば次の文を見てみましょう。
Yo quiero ir a México. 「私はメキシコに行きたい。」
(I want to go to Mexico.)
主動詞の quiero 「私は〜したい」は「現在時制で主語が単数第一人称である」という条件に従って動詞 querer が形態変化した形をとっています。これに対して ir 「行く」は不定形です。
もう一つ別の例文を見てみましょう。
No necesitas visa para ir a México. 「メキシコに行くのにビザはいらない。」
(You don't need visa to go to Mexico.)
この場合の ir は前置詞句の中の要素として用いられています。
このようにスペイン語の動詞の不定形の用法は、英語の「to 不定詞」あるいは「動詞の原形」の用法と共通しています。